この作品は作者はやまおう。の著作物です。 利用の際、製作者を偽る事は禁じます。 イプ劇、こえ部Liveでの上演以外の利用の場合は、 BBSにご一報ください。 ※事後報告でも構いませんが、作者名記載を忘れずに。 |
●比率 5:4:1or4:2:1
登場人物
- ブルーグ・ナハトイェガー(♂):28歳。やや根暗。
- イクス・アロンソ(♂):28歳。チャラい。
- ソクラ(♀):恐らく20代半ば~後半。無感情でどことなく威圧的。
- アネッタ・ウィリアム(♀):33歳。キャリアウーマン。
- ブライアン・ルーソン(♂):22歳。ヒス男。
- 川崎博士(♂):53歳。穏やかで寂れた中年男性。
- ナレーション(不問)
※以下、被りでも大丈夫なキャラ
- ジェイク・バスクード(♂):余裕たっぷりだが、負けず嫌い。
(ブライアンとの被り推奨)
- メアリー(♀):9歳。
(ソクラorアネッタとの被り推奨)
- ミランダ(♀):年齢不詳(ブルーグよりは上)。セクシー。
(ソクラorアネッタとの被り推奨)
※詳しい説明はこちらへ→登場人物詳細
役表
10人用
【ParasiteNOVA】第三話『目覚め』 ブルーグ♂: イクス♂: ソクラ♀: アネッタ♀: ブライアン♂: 川崎♂: ナレ♂♀: ジェイク♂: メアリー♀: ミランダ♀: http://urx.nu/aoJz |
7人用
【ParasiteNOVA】第三話『目覚め』 ブルーグ♂: イクス♂: ソクラ&♀: アネッタ&♀: ブライアン&ジェイク♂: 川崎♂: ナレ♂♀: http://urx.nu/aoJz |
本編
【あらすじ?】
イクス:「うおぉぉぉぉ!!」
ブルーグ:「どうした?イクス。」
イクス:「どうしたもこうしたもあるかよ!
あー…ホント、どうしたらいいんだ?」
ブルーグ:「あぁ、前回壊した遺跡の事か…。」
イクス:「やっぱ減給かぁ?謹慎かぁ?」
ソクラ:「それだけで済めばいいけどな。」
イクス:「え…?ヤダ、ヤメてー?
そういう事言うとオジさん、泣きそうだから。」
アネッタ:「それに加えて、ブルーグ?」
ブルーグ:「ん?」
アネッタ:「貴方に至っては未成年者略取じゃない。」
ブルーグ:「どうしてそうなった?!」
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ナレ:ディーパ合衆国、首都セントラル・ディーパ。
政府機関関連のビルが立ち並ぶ中に、
ディーパ軍、総合施設ビルはあった。
ブルーグ達の所属する『WPC』の総本部もまた、
この近代的で無機質な建物の中にある。
『WPC』はディーパを中心にサルス、
ノートルゲートに支部があり、
各国共に、一部の人間にしか、その存在が知られていない。
パラサイトの存在然り、彼らの存在も、
多くの人間に知られてはいけない、機密事項であった。
アネッタ:「…それじゃ、ここにサインを。」
ブライアン:「ブライアン・ルーソン…っと。
はい、これで大丈夫でしょうか?」
アネッタ:「えぇ、確かに。」
ナレ:ブライアンから書類を受け取ると、
満足した様子で、眼鏡の女が頷く。
女はそれをバインダーに挟むと、
柔らかな口調で、話しかける。
アネッタ:「ドクター川崎の助手なのに、
こんな堅苦しい書面にサインをさせて悪かったわ。」
ブライアン:「あ…いいえ!当然のことです!
僕は一応、『まだ』民間人ですから。」
アネッタ:「『まだ』…って、あぁ!そう。
とうとう本部勤務になるのね?」
ブライアン:「川崎先生には、小さい頃から本当に良くしていただいて。
幼くして父を亡くした僕を気遣ってくれていたので、
大人になったら、
少しでも先生の役に立ちたいと思っていました。」
アネッタ:「確か…ドクター川崎の大学時代の友人、
だったわね?お父様は。」
ブライアン:「はい!」
アネッタ:「ルーソン…。」
ナレ:女は、受け取った書類に書かれたサインを指でなぞった。
ブライアン:「ウィリアム副総帥?」
アネッタ:「…え?…えぇ、なんでもないわ。
遺跡の調査は、今後予定にはないけど大丈夫なの?」
ブライアン:「その事なんですが、
今後は先生の研究全般のお手伝いをする事になりました。
専門の考古学以外の事も。」
アネッタ:「あら…若いのに、茨の道を選ぶのね?」
ブライアン:「尊敬している川崎先生の、
教えを請う事が出来るなら、本望ですよ。
それじゃ、研究室の片付けが残っているので、これで。」
アネッタ:「えぇ、今後ともよろしくね。」
ナレ:ブライアンはニッコリと微笑むと、
研究室棟の方へと歩いて行った。
腰に携えた通信機に反応がある。
アネッタ:「こちらアネッタ。
あ、総帥!…えぇ、これから向かうところです。
…その事なら、心配には及びません。
問題になる以前に処理しておきましたから。
…では、後ほど。」
ナレ:一方、その頃―。
ディーパの摩天楼を一望できる窓をバックに、
一人のスーツの男が、ゆったりと大きな椅子に座っている。
机に置かれたネームプレートには、
『ジェイク・バスクード総帥』と書かれていた。
その前で、この世の終わりの様な表情を浮かべ、
大きく項垂れているイクス。
ジェイク:「先の任務、ご苦労だった。
歴史的大発見を崩壊させた罪は重いぞ、イクス。」
イクス:「う…っ。」
ジェイク:「本来なら懲戒免職ものだが…。
過去の遺物と、現状の危機を打破する為の人材。
我々にとって必要なものは後者のほうだ。」
イクス:「それじゃっ…!」
ジェイク:「今回の件については、1ヶ月の謹慎処分で済ましてやろう。」
イクス:「うげっ…それでも謹慎かよ…。しかも一ヶ月…。」
ナレ:イクスは更に大きく項垂れた。
その背後、扉の開閉音と共に
ハイヒールの足音が、こちらへと向かってくる。
アネッタ:「それでも激甘よ?感謝して欲しいくらいだわ。
私が根回ししなかったら、どうなっていた事か…。」
ブルーグ:「アネッ…(咳払い)副総帥の言う通りだ。
大人しく家でのんびりすることだな。」
イクス:「うぐ…わ、わーったよ…。」
ブルーグ:「WPC。いや、ディーパ全体の信頼を落としたんだぞ?
処刑されてもいいくらいだ。」
イクス:「そ、そんなぁ!」
ナレ:ブルーグの言葉に半泣きになるイクス。
再び開閉音がすると共に、
今度は東洋系の、白衣の中年男性が入ってくる。
川崎:「まぁまぁ、そこまで責任を感じなくてもいいですよ。」
ソクラ:「…ドクター。」
川崎:「イクス、君は世界の脅威を消してくれた。
…私の罪をひとつ、消してくれたんだ。」
ナレ:消え入りそうな男性の言葉を、
ブルーグは違和感を覚えながら聞いた。
川崎:「総帥。
ここは私に免じて、彼の謹慎を緩めてはくれませんか?」
ジェイク:「しかし…」
川崎:「1ヶ月もの間、WPCのメンバーが2人では活動も困難でしょう。
それに、遺跡発掘の指揮者である、張本人が良いと言ってるんです。」
アネッタ:「それは総帥も理解してます。ですが…。」
ソクラ:「つけ上がるだけだ。」
ナレ:ソクラの言葉に、少し考えた表情を浮かべ、
何かを思いつくと、男性は再び口を開く。
川崎:「では、どうでしょう。
彼に私の論文の手伝いをさせてみては。」
イクス:「博士の論文だぁ!?じょ、冗談じゃねぇよ!」
ナレ:慌てふためくイクス。
その反応を楽しむように、意地悪な表情を浮かべる面々。
ジェイク:「それはいいアイディアだ。
それなら、謹慎処分は無しでもいい。」
ソクラ:「ドクターの論文か。
脳タリンのイクスからすれば、どんな刑よりも重い。」
ブルーグ:「よかったなぁ、イクス。
暇を持て余すことはなさそうだぞ?」
イクス:「お前ら全員鬼だ!」
ナレ:楽しげな余韻に浸りつつ、
WPC総帥、ジェイク・バスクードは話題を切り替える。
ジェイク:「ところで川崎博士。
ここへ来たのは、こんな話をする為じゃないだろう?」
川崎:「ご明察ですね。
実はブルーグ達が連れ帰ってきた
少女の精密検査を行なったのですが・・・。」
ブルーグ:「メアリーの事か。」
川崎:「メアリーと言いましたか、あの少女は。
実はですね…不思議な事に侵食されていなかったんです。」
ナレ:博士の言葉に、一同は表情を強ばらせた。
特にジェイクとアネッタの驚きようは、
他の三人に比べても大きい。
アネッタ:「侵食…されてないですって?」
川崎:「にわかに信じられない話ですがね。
ブルーグ達の話で聞く限りだと、
侵食Lv5になっていてもおかしくはないのです。しかし…」
ジェイク:「…しかし?」
川崎:「Lv1どころか、パラサイト反応0。
一度も接触したことのない人間と、同じ数値だったんですよ。
一体どうしてなのか…。」
ブルーグ:「あの時。
…遺跡で俺がトレントに襲われた時。
メアリーが光って…。」
イクス:「そうそう!急に光ったかと思ったら、
パラサイトの肉体が粉砕したんだよ!
なぁ?弾け飛ぶように。」
ジェイク:「パラサイトが…粉砕?」
アネッタ:「今まで聞いたことのない事例ですね…。」
ナレ:信じられない様子のジェイク。
博士は小さく唸る。
川崎:「総帥。
是非、私にこの少女の研究をさせては頂けないでしょうか?
もしかすると、今後我々の活動に…」
ブルーグ:「(遮る様に)あんな幼い少女を研究材料にするなんて、
いくらなんでも!」
ジェイク:「(更に遮るように)認める。」
ブルーグ:「おい、ジェイク!!」
ジェイク:「『総帥』と呼べといったはずだぞ?ブルーグ。
たとえ旧知の仲でも、場を弁えろ。」
ブルーグ:「く…っ」
ナレ:苦々しい表情を浮かべるブルーグ。
ジェイクはそんなことはお構いなしに、話を続ける。
ジェイク:「生物遺伝子学チームは、彼女の遺伝子データの分析。
及び、パラサイトに対する謎の攻撃の分析に
取り掛かるように。」
川崎:「了解です。
では、少女が目覚めるまで、準備に取り掛かっています。
ブルーグ、彼女は医務室にいますから、
様子を見てきてはもらえませんか?」
ブルーグ:「………はい。」
ナレ:ブルーグの態度からして、
納得出来ていないだろうという事は、誰もが理解していた。
そんな微妙な雰囲気を払拭しようと、優しい口調になるアネッタ。
アネッタ:「話は以上かしらね。
今のところ任務はないわ。一時休戦。
でも、いつパラサイトが出現するかわからないわ。
各自、トレーニング、体調管理を忘れないようにね。」
イクス:「(伸び)ん…ん~っ!
ようやく終わったかぁ~?よし、いっちょ飲みに…」
ソクラ:「お前は、『ドクターの論文の手伝い』があるだろう。」
イクス:「うっ…そうだった、そうでした…。
ソクラァ…ちょ~っと、手伝ってくれたり…」
ソクラ:「(被せる様に)するわけないだろう。」
イクス:「そう…ですよねー!アハ…アハハハハ…ハァ…」
ソクラ:「私はメンテナンスがある。
…じゃあな。」
イクス:「メンテナンス…?」
ナレ:冷たく言い放ち、その場を後にするソクラ。
ソクラの言葉の意味が、理解出来ずにいるイクスに、
博士が声をかける。
川崎:「イクス、君は私についてきてください。」
イクス:「ふぇ~い…。」
ナレ:意気消沈。
博士と共に、イクスはトボトボと総帥室を去っていった。
ジェイク:「それじゃ、ブルーグ。お前は医務室に。」
ブルーグ:「…ラジャー。」
ナレ:面白くなさそうに返事をすると、
ブルーグもまた、去っていく。
残ったのがジェイクとアネッタだけになると、
アネッタは可笑しそうに訊ねる。
アネッタ:「…反抗期、ですかね。」
ジェイク:「あいつの反抗的な態度は、今に始まった話じゃない。
ここに来た時だってなぁ…」
アネッタ:「総帥もブルーグも、負けず嫌いですもんね。」
ジェイク:「こっちは甚だ迷惑しているんだ。」
アネッタ:「その割に、楽しそうですね。総帥。」
ナレ:確かに、アネッタの言葉通り。
ジェイクの口調は、先程までのそれとは違っていた。
意地を張っているようにも見えるが、
その口元は緩み、眼差しも柔らかかった。
一方、医務室へと続く廊下。
ブルーグの表情は、
先程までのものとは違った意味での
『困惑』を浮かべていた。
というのも、これから向かう医務室に問題があったのだ。
ブルーグ:「…はぁ。」
ナレ:ため息を漏らし、開閉ボタンを押そうと
指を向けるも、何かが邪魔をする。
意を決し、ようやく開閉ボタンを押したのは
それから3分後の事だった。
ブルーグ:「ミランダ…」
ナレ:扉が開くと同時に、目の前に飛び込んできたのは、
男なら誰しもが喜んでしまいそうな、柔らかな二つの膨らみだった。
勢いよく衝突し、反動で体が後ろに下がる。
ミランダ:「ブルーグゥ!!
貴方から会いに来てくれるなんて、珍しいじゃない!」
ブルーグ:「・・・痛い。」
ナレ:金髪の美女に圧倒され、ブルーグは表情を引き攣らせる。
ミランダ・ノースヒルズ。
ディーパ上層部勤務、軍医。
恐ろしい程の美貌を持ち、そのプロポーションもまた、
神が与えた芸術作品のようだと…イクスが称している。
と、いうのも大げさな話ではなく、
彼女目当てに、わざと怪我をしてくる輩までいるのだ。
とにかく、ディーパ軍随一のディーバが、
どういう訳か、猛烈にアタックしているのが
ブルーグなのである。
ミランダ:「ごめんなさぁい!嬉しくってついつい。
デートのお誘いかしら?」
ブルーグ:「冗談はやめてくれ!上からの命令だ。
ここに、青い髪の少女がいるだろう?
様子を見てくるようにと…。」
ミランダ:「なーんだ、つまんない。
その子ならベッドに横になってるわ。
まだ寝てるわよ。」
ナレ:明らかにつまらなさそうに、
ミランダは回転椅子に腰をかけると、
足を組んで、ベッドの方を指し示した。
カーテンを開け、中の様子を伺うと、
確かに青髪の少女メアリーが、小さな寝息を立てている。
ブルーグ:「顔色は…良さそうだな。」
ミランダ:「このミランダさんが誘っても、相手にもしてくれないのに。
その子にはそんな顔見せるのね。」
ナレ:拗ねた素振りを見せるミランダに、
ブルーグはあくまでペースを崩さずに答える。
ブルーグ:「あくまで命令だからな。」
ミランダ:「じゃ、上から命令されれば私ともデートしてくれるんだ?」
ブルーグ:「はぁ?」
ミランダ:「冗談冗談!」
ナレ:突拍子のない事を言うミランダに、
思わず乱される。
ブルーグはあまり、感情を乱される事は好きではない。
何かと振り回してくるこの女を、
苦手とする理由は、そこにあった。
メアリー:「ん…うぅ…ん…」
ナレ:メアリーがようやく目を覚ます。
ミランダ:「あら、ナイスタイミングねぇ。」
メアリー:「…あれ?…ここ…どこ?」
ナレ:まだ意識が半分夢の中なのか、
少女は寝ぼけた様子で、部屋をぼんやりと見渡す。
ブルーグ:「覚えてるか?さっきのこと。」
メアリー:「さっき…?」
ナレ:やっと、現実に戻る。
メアリー:「っ?!木のお化け!!」
ブルーグ:「大丈夫だ!
もう…木のお化けはいない。」
メアリー:「え?…あっ!」
ナレ:ブルーグの優しい口調に、
少しだけ気分が落ち着いたのか、
メアリーの表情が変わった。
ブルーグ:「思い出したか。」
メアリー:「(頷いて)…こわ…かった…。」
ブルーグ:「そりゃそうだ。
どうしてあんなことになったかわからないが、
あんな化け物に捕まってたんだ。怖くないわけがない。」
メアリー:「…ママ。」
ナレ:メアリーは涙を滲ませるが、
零さない様に、必死でこらえている。
黙って様子を見ていたミランダが、
思い出して訊ねる。
ミランダ:「そういえば、この子の親は?
連絡先とか聞かなくていいの?」
ブルーグ:「あぁ、そうだな。メアリー。
お前の家はどこだ?両親はどこにいる?」
メアリー:「…戦争が始まって…ママと二人で逃げてきたの。」
ブルーグ:「戦争?」
ミランダ:「戦争って…今だと、
フォルテスくらいしか思い浮かばないわ。
でも、フォルテス人は黒髪のはずよ?
そもそも、青い髪の人間なんて…」
ブルーグ:「静かにしろ。
まだ喋ってる。」
ミランダ:「むぅ…。」
メアリー:「それで…逃げてたら…えっと…。
ママとね…戦ってて…。」
ブルーグ:「誰が?」
メアリー:「お姉ちゃん。」
ブルーグ:「お姉ちゃん?メアリーのか?」
メアリー:「うぅん。メアリーのお姉ちゃんじゃないよ。
メアリー、お姉ちゃんいないもん。」
ブルーグ:「そっか…。」
ミランダ:「その…お姉ちゃんっていうのが、
貴女のママと戦ってたの?」
メアリー:「うん。
そしたら、メアリーだけ木のお化けに捕まって…。
それで…それで…。」
ナレ:襲われた時の事を思い出したのか、
我慢していた涙が、ポロポロと
頬を伝って流れた。
ブルーグは優しく、メアリーの頭を撫でた。
ブルーグ:「意識を取り戻して間もないんだ。
すまないな、いろいろ聞いて。」
ミランダ:「子供には優しいのねぇ。」
ブルーグ:「ほっとけ。
メアリー、しばらくは此処にいればいい。
ちゃんとお母さん、探してやるからな。」
メアリー:「…うん。」
ナレ:一方、研究室。
片付けが一段落し、ブライアンは、
博士から託されていた研究データをまとめていた。
博士に連れられ、イクスが研究室の中へとやってくると、
ブライアンは親の仇でも見るような目で、イクスを睨む。
ブライアン:「来ましたね!遺跡破壊の張本人!」
イクス:「ゲッ…ブライアン。相変わらず口うるせぇ野郎だな。」
ブライアン:「その様子だと、刑に処する事になったようですね。
いやぁ、よかった!あのまま逃げられたら
僕たちの苦労が…。」
ナレ:ブライアンは嬉しそうに、そして意地が悪そうにニヤつく。
川崎:「ブライアン。君にも手伝ってもらいますからね?
私の論文は毎回200枚と決めてるので。」
ブライアン:「そうですよ、イクスさん。
先生の論文の手伝いは、いやぁ、それは大変…え?
せ、先生…僕も…先生の論文の手伝いをですか?!」
ナレ:予想外の博士の言葉に、ブライアンは動揺を隠せない。
川崎:「当然です。
現場監督は君なのですよ?
責任を取るのはおかしな事ではありませんよね?」
ブライアン:「え…でも…ぼっ…ぼ…ハァ…。
…そう…です…ね。」
イクス:「よかったぁ、俺一人じゃなくて…。」
川崎:「さて、論文作りは後にして…。
ブライアン、先ほどお願いしていた事ですが…。」
ブライアン:「えぇ、終わってますよ。
これから確認するところです。」
川崎:「そうですか。ありがとうございます。」
イクス:「んなぁ?」
ブライアン:「イクスさんに理解出来るかどうかわかりませんが、
…ご覧になられますか?」
イクス:「だからさぁ~、最初から決めつけるのはやめてくれないかぃ?」
ナレ:明らかにイクスを見下したような物言いで、
ブライアンは何かが書かれた紙を、ヒラヒラと揺らす。
騒がしい二人そっちのけ、博士は神妙な面持ちで
渡された紙に目を通している。
川崎:「ふむ…。
これは…本当ですか?」
ブライアン:「えぇ、間違いありません。
僕もおかしいと思って、
別の人間のデータとも比較しましたが…。」
イクス:「え?なになに?」
ナレ:興味津々といった様子で、
イクスは二人のやりとりに首を突っ込む。
イクスの前に、難しい単語や、
数値の書かれた紙を差し出される。
イクス:「な…っ?!なん…だと…?!」
ブライアン:「イクスさん、わかるんですか?」
ナレ:衝撃を受けたようなイクスの表情に、
ブライアンは意外そうに訊ねる。
が。
イクス:「…さっぱりわからん!!てか、何語だこれ!」
ブライアン:「(ため息)…やっぱり。」
ナレ:一瞬でも、イクスが理解したと
思ってしまった自分を、
恥ずかしく感じるブライアンであった。
川崎:「あの少女、メアリーの遺伝子情報ですよ。
試しにブライアン、別の人間のデータを。」
ブライアン:「はい、これです。」
ナレ:ブライアンは自分のデスクから、
新たな資料を差し出す。
博士はそれを受け取ると、両者を比較するように
机に並べながら、説明する。
川崎:「これが通常の人間の遺伝子データの一部。
そしてこっちが、少女の。」
ナレ:見比べるが、イクスには違いがわからない。
イクス:「これの…どこがおかしいんだ?」
ブライアン:「…ここまで頭が弱いと泣けてきますよ。」
イクス:「っさいわ!」
川崎:「通常ですとね、ここと…ここ。
この部分だけ違うデータになるはずなんです。
人間の遺伝子というのは、この部分を除いて、
みんな一緒ですから。」
イクス:「ほーうほうほうほう。」
ブライアン:「わかりますよね?
この二つのデータが全く違うという事が。」
イクス:「ふむふむ。
…それで?」
ブライアン:「…先生。
僕、こんな人と協力しなきゃいけないんですか?
先行き不安です。」
ナレ:あっけらかんと答えるイクスに、
やり場のない感情を抱くブライアン。
川崎:「まぁまぁ…。
これが意味することはですね。
あの少女は、我々『人間』とは
違う生き物だということなのです。」
イクス:「ふーん、そっかぁ~。
へ~、人間じゃないんだぁ~…ん?
って、えぇっ!?」
ブライアン:「貴方、軍人やめたらリアクション芸人になれますよ…。」
ナレ:端的に説明され、ようやく理解する。
イクスは信じられないといった様子で、
博士に訊ねた。
イクス:「に、人間じゃないって、なんなんだよぉ!
どう見ても人間の女の子じゃないか。」
川崎:「そうなんですよねぇ…。
不思議なことがあるものですね。」
ブライアン:「ちなみに、パラサイトの細胞と比較しても、
別物であることが分かりました。」
イクス:「つまりなんだぁ。
あの子はパラサイトでも、人間でもないってことか。
…んじゃ、なんだ?」
ブライアン:「ムッ!
だから…それを今から調べるんです!」
川崎:「ブライアン、落ち着きなさい。」
ナレ:全く緊張感のないイクスに痺れを切らし、
ブライアンがムキになって答える。
ふと、研究室の扉が開く。
医務室からやってきたブルーグであった。
イクス:「っよ!相棒。」
ブルーグ:「ん?イクス。いたのか。」
イクス:「(極力真似して)『いたのか。』じゃねーよ!
おっさ…川崎博士の手伝いするからぁ~って
一緒に出てったろ?」
ブルーグ:「そう言えばそうだったな。
あぁ、先生。メアリーが意識を戻しました。」
川崎:「報告ありがとうございます。
…おや?」
ナレ:ふと、博士はブルーグの顔を見て首を傾げる。
ブルーグ:「はい?」
川崎:「なんだか、顔色が優れませんねぇ。」
ブルーグ:「え?特に不調は…。」
川崎:「私の思い過しでしょうか。
まぁ、何かあったときは私の精密検査でも、
ミランダの検診でも受けることですね。」
ナレ:ブルーグは苦笑いを浮かべた。
ブルーグ:「…その時は川崎先生にお願いします。
それじゃ、俺はこれで…」
川崎:「あぁ、ブルーグ。もうひとつ。」
ブルーグ:「なんです?」
川崎:「メアリーのことで、少しお話伺えますか?
こちらからも報告があります。」
ブルーグ:「…はぁ。」
ナレ:その頃、食堂のデッキ。
ディーパの夜景を見つめながら、
ミランダは誰かと携帯を通じ、会話をしている。
相手が誰なのか、窺い知る事は出来ない。
ミランダ:「…話は一致してる。
勿論、わかっている内容のみだけどね。
調べてみる価値はあるわ。
…やってみる。…えぇ、任せておいて。」
ナレ:妖艶な微笑みを浮かべ、電話を切る。
吹き抜ける柔らかな風が、悪戯に彼女のブロンドを揺らした。
ミランダ:「ブルーグ・ナハトイェガー…か。
…本当に、よく似てるわ。」
【To Be Continued...】